かもつぶ。

かものはしのつぶやきなので、かもつぶ。

あ、あなどれん!

本日も受付嬢@ラ・カーニャ
今日はシバが企画した斉藤哲夫、野澤享司、中川イサトのライヴなのであった。

いや、マジ、すばらしかった。
全員、それぞれの演奏で1度は涙があふれてしまう。
つまりは最低、4回泣いてたわけで(あははは)

正直言いまして、
このオジサマ方とのつきあいってのは、長いのです。
だから、何度となくライヴを見ている。
その中でも4人が4人ともそろって、ここ数年のベストだったんじゃないか、ってくらいのライヴだったのです。
こんなこと、珍しい。
ほんとにずっと聞いてきて良かった、と正直に、しみじみ思ったのです。

トップ・バッターは野澤享司。
数年前に出したCDからの選曲で前半。ところが、最後にこれはほんとうに野澤さんの中でも珍しい。ずっと歌っていなかった『白昼夢』が飛び出したのでした。
ほんと、生で聞くの30年ぶり、みたいな世界です。
またこのときの野澤さんの声の安定感、野澤享司でしかありえないギターの伴奏の域を越えた演奏。
一瞬にして囚われ、声さえ出ず、の絶品。
そして斉藤哲夫を呼び込んで、二人での
『君が気がかり』
この不思議な転調の曲は、しかし複雑な構成にもかかわらずポップな楽曲。不遇のシングルだったのだけれど、カモは大好きな曲。こうして二人で歌うのを聞いていると、二人の若い頃の音楽的結びつきの中にはビートルズがあり、バーズがあり、という、その当時の無条件に楽しいからこそやっていた音楽の喜びが見えてくる。なんて幸せな今日のできなんだろうか。
すでにここまででひと泣き(笑)

2番手は斉藤哲夫
この斉藤哲夫は、これまで見たなかで最高のステージでした。
哲夫さんはいつもいろいろと悩みながら、紆余曲折しながら音楽をやっているところがあって、その頑固さがステージに出てしまうことが多い。すると、ムリが出て来て、あまり良くなくなってしまう。ところが、今日は、なんの迷いも不安も思いもなく、とにかく気持ちいいから歌っている斉藤哲夫なのです。それは、あのソニーからリリースされていた名作3枚の、カモが大好きなポップで際立ったあの世界がそのまま、目の前にある、というものだったのだから、哲夫さんのステージ中、ずっと目頭が熱くなりっぱなし。
哲夫さん、あんまりよかったので彼だけはセット・リストを書いておきます。
1.あなたの船(アーリーもやっているというかオリジナルである)
2.僕の古い友達
3.夜空のロックンローラー
4.悩み多き者よ
5.バイバイグッドバイサラバイ

いや、もう『悩み多き者よ』では感極まった。『バイバイグッドバイサラバイ』でダメ押し(笑)。ここで二泣き目(わはは)。
しかし! 声、出てます。一時期は出てなかったのに、ばいばいが歌えるってのは、ほんとに声が出てる。しかも艶やかに。
リハのときから「あれ? 今日の哲夫さん、ちょっとすごい」と思っていたのだけれども、こりゃーもう、見れて良かった、としか言いようがない。

3番手は中川イサト
前の二人のあまりの良さに刺激されたのか、イサトさんは常に安定しているギタリストだが、今日の野趣と冒険心にあふれた演奏に驚く。
時間が短いせいもあってか、歌の楽曲中心というとても珍しい構成。
しかもリハではやらなかった曲、突然、歌いはじめたのでした。
30年聞いて来て、生でこれ歌うの初めて聴いた。びっくりして、ここでまた涙、三泣き目です(笑)。
それは『お茶の時間』という初期名盤に収録されている『プロペラ市さえ町あれば通り1の2の3』。こんなギター弾きながら歌えるってのがすごい。これまた伴奏の域を越えたギター。
そして同じ『お茶の時間』収録の名曲『その気になれば』。

最後、トリはシバです。
「こんばんわ、シバでーす!」(笑)
はい、始まりました。ところがだ。このシバもまた前の3人に刺激されたのか、ちょっとこのギター、なによ、すごすぎる。シバだってなあ、年間何回、見てると思ってるんだ。その中でもかなりベストな状態。本人は正月早々、膝の皿を割ってしまって、ギブスの不自由な状態。しかもシバ独特のリズムをキープする動きは、割った左足でとるリズム。ゆえについ忘れて踏み込んでしまい、痛みが走っているのが分かるほど。にも関わらず、壮絶な演奏。
『愛の国道20号線』で始まって、『雨』『バイバイ・ブルース』と続いていく。
つい、我を忘れて声が出る。
シバの歌はフォークではない。ブルースなのだ。
だから、ほんとうにすばらしいライヴをするときのシバの歌を聴くと、体の中に手を突っ込まれて、こちらの魂や胃の腑を引っ張り出されてしまうような感覚に陥る。そしてつい声が出る。

『雨』という曲は、ついに1枚のアルバムも残すことなかったシンガーソング・ライター、朝比奈逸人(ヤス)の曲で、本人が歌うことを拒否している今、吉祥寺ぐあらん堂時代の仲間たちがこうして歌い継いでいる以外、もう聴くことはできない(一部春一番のライヴ盤に収録されているけれど)。けれど、高田渡にしてもシバにしても村上律にしても、みなヤスさんの歌を、そしてヤスさんをとても愛している。こうして誰かが歌い継いでいるのを聴くのはとても嬉しい。

そして最後、全員での『淋しい気持ちで』。
あー、会場大合唱だわ。
♪あ〜あ〜、まっぴらさ〜

本日のライヴ、シンガーソング・ライターたちの歌の競演であり、それぞれのスタイルのヴォーカルの火花散る勝負であり、そして。
実にここがおもしろかったのだけれど、伴奏という域を越えてしまう、しかし歌と一体になったギターの競演でもあったのだ。しかし、このギターが歌があるという前提だからすごいんだよなあ。

いやー、今年しょっぱなにベスト1ライヴ、いきなりきちゃったよ。嬉しいなあ。ほんっとーに嬉しい。

それにしてもオヤジども、ほんっとにあなどれんなあ。
本日の年齢合計226歳也。